我が家にラヴィがやってきたのは2年半前の平成21年4月。
ボクサー犬・メス・推定3~5歳。千葉県の動物愛護センターに収容されていた元保護犬です。
ラヴィについては「他犬とのコミュニケーションが上手く出来ない」と聞いていました。
預かりボランティアのお宅の先住犬との反りも合わず、生活環境も完全隔離していたそうです。ボクサー犬である上に、他犬とのコミュニケーションが上手く出来ないという厳しい条件も重なり、里親探しには大変苦労なさったようです。
犬・猫・鳥を見かけると吠えまくる。特に車や病院の待合室のような狭い空間に自分が居るときに犬や猫を見かけると興奮し、吠えて、手を付けられないほど暴れました。
そのときのラヴィは目が充血し、ヨダレを垂らし、背中の毛を逆立て、サイレンのような声で相手が見えなくなるまで吠え続けている状況で、見ていて気の毒なほどでした。
ただ家で私達と過ごしているときには本当に穏やかで、家具やカーテン等を悪戯する事もなく、基本的なコマンドはすぐに理解し、賢くて可愛い甘えん坊でした。
「外での威嚇吠え」以外には問題がなかったので、家の中で快適に過ごしてさえくれれば…。ラヴィが安心して過ごせる家があればそれだけで良い!と思ったりもしましたが、我を失うほど興奮して吠えるラヴィが可哀相で可哀相で…。
そこで、ある訓練所に1ヶ月ラヴィをお預けしました。吠えるのだけ止めさせたいと。訓練所から帰ってきたラヴィは確かに変わっていました。
必死に吠えたいのを我慢している感じ。 「預けて良かった」と主人と喜んでいたのですが、訓練士のように上手くコントロールする事が出来ず徐々に元の状態に戻っていき、2ヵ月後にはすっかり元通り。先日まで出来ていた事が出来なくなり、「そんな筈じゃない!」と次第にイライラし始め、ラヴィとの散歩が全く楽しいものではなくなってしまいました。
自分を責め、ラヴィを責め、最後には「吠えるのだけ目をつぶればとても良い子なんだから」と再び諦めそうになりましたが、この1ヶ月のラヴィの努力を無駄にしたくなかったし、確かに手応えを感じたのだから、可能性を信じてみよう!と、もう一度チャレンジすることにしました。
ますみさんとの出会いのきっかけは、ラヴィの預かりをして下さったボランティアの方のブログ。東京でのグループセッションに参加した際の記事が載っていて、次々と、しかも確実に問題をクリアしていくMASUMIマジックを見た時の感動が綴られていました。 「MASUMIさんに助けてもらいたい」そう思った私は、すぐにメールセッションの申込みをしました。 どんな犬にもフレンドリーになる必要はないけれど、できれば心を頑なに閉ざすのではなく、私たちと一緒に生活をしていく中でラヴィ自身が心地よいと感じる仲間や空間を見つけて欲しい。
私達の夢を押し付けない程度に、ラヴィがラヴィ自身で世界を広げられるようお手伝いをしたい。そんな私たちの願いにMASUMIさんが力を貸してくれました。
セッションが始まってまず最初に聞かれたのは、現在のラヴィの環境や日課、生活サイクルなど。家の中では良い子なのに、家の中での様子を聞くのはなぜ?というのが正直な感想でした。それがラヴィの心と体のバランスを保つ為であることは、その後で知りましたけれど。
訓練所に預けた時もそうでしたが、「吠えるのだけを止めさせたい」と思っていましたからMASUMIさんとの最初の1週間のメールのやり取りには戸惑う事もしばしば。プロングでガツン!スプレーでブシュー!とか、そういう事を想像してましたからね。
でもその1週間のメールのやり取りの中にも、既に問題解決のカギは沢山ありましたし、 吠える事以外の問題点も洗い出して頂きました。興奮すると飛び掛る。夕飯前になると吠える。たびたびトイレを失敗する。外での他犬への吠えだけにとらわれていたので、特に問題視していませんでしたが、こういった行動も全て問題の吠え行動に繋がる一つの要素だったんですね。
そして何より、私たちの意識改革。前にもボクサーを飼っていたこともあり、犬の扱いには変な自信がありました。しかし…全然分かっていなかったんです。犬の扱いも、犬の気持ちも。 「目からうろこ」というより、私自身がプロングでガツン!とやられた気分でした。
とにかくラヴィが吠えないように、意識の中に、また視界の中に常にラヴィがいて、気持ちに全く余裕がなかったのです。というか、それでこそボスだ!などと勘違いしちゃってたんです…恥ずかしながら。
実際にプロング・スプレーを使ってのトレーニングも容易にはいきませんでした。周りを田んぼに囲まれた超ド田舎な土地柄で、人も車もまばら。
犬も少ないですし。なので、平日はなかなかトレーニングの成果を上げることが出来ませんでした。MASUMIさんに動画を送るにも、そういった場面になかなか出くわさないですから…。
結局、きちんとトレーニングが出来たのは週末くらいなものでしたが、やはり週に1~2度では私たちもラヴィもなかなかコツを掴めず、悩んだり落ち込んだりして苦労しましたよ。
私の中で一番大変だったのは「しの字リード」でした。いつ犬や猫に向かっていくか分からないのに、人ごみの中でリードを弛ませておくなんて、それはそれは恐ろしくて、気がつくとリードを持つ手に力が入ってしまっていました。これは自分の自信のなさの表れ。そしてラヴィを信用していない証拠。
その事をご指摘いただいたとき、少なからずショックは受けましたが、同時に「そっかー!」と晴れやかな気持ちになった事も事実です。
メールセッション4週間と東京でのグループセッション。確かに時間は掛かりましたが、ラヴィの心と体のバランス調整、私たちの意識改革には 必要な時間でした。全てをさらけ出して、吐き出して、そしてゼロからスタートして、やっと1歩2歩と進み始めました。
1月のグループセッションから9ヶ月。時間があるときには人ごみや犬連れの人の集まりそうな場所に連れて行って勉強しています。
様々な犬種が集まるドッグランに初めて足を踏み入れたときの事。他の犬に寄ってこられると緊張MAXになり、自分のお尻の匂いを嗅がれることに抵抗したり、逆にお尻の匂いを嗅ごうとして相手に逃げられたりで、結局はドッグラン内でリードを付けたままブラブラと歩き回ることしか出来ませんでした。
しかし、そういう状況でも他犬とのふれ合いの場を持ってきたことでラヴィも徐々に慣れてきたのか、最近ではきちんと挨拶も出来るようになったし、上手に遊ぶこともできるようになりました。
もちろん失敗もありました。遊びのつもりが次第にけんか腰になっていき、最終的には流血バトルになったこともありますし、きちんとご挨拶できたので「さぁー遊ぼうか!」と誘ったら、キレたグレピが上から覆いかぶさってきて、背中に30cm位のミミズ腫れが出来た事も。とってもフレンドリーなパピヨンを「獲物」と勘違いし、全速力で追いかけてパンチ一撃で仕留めてしまったなんて事もありました。
でも失敗や経験を重ねていくうちに、お互いの間合いを感じ取れるようになったらしいです。あるとき、ドッグラン内にいた若いシェパードに挨拶をしたら、相手が鼻にしわを寄せてヴ~と唸ったんです。
そうしたら、それ以降いっさいシェパードには近づかなかったんです。以前のラヴィだったら間違いなく喧嘩お買い上げだったでしょうに…。
これまでの勉強は、私にとっても大きな収穫に繋がりました。とにかく慣れる事。そういう場を自ら作り、少しずつ慣らしていく事をコツコツと続けていきました。
ショッピングモールをぶらぶら歩いたり、人の行き来が多いところにボーっと座ってみたり、寄ってきた小さい子供に撫でて貰ったり、ラヴィに興味を持ってくれた人としばらく世間話をしたり。
ラヴィを連れての外出を、散歩やドッグランといったラヴィ主体のものだけではなく、私自身も楽しめるような機会にしようと思って。すると、自分が楽しむ事で徐々にリラックスできるようになり、それがラヴィにも伝わるようになってきたようです。ラヴィと私が繋がったような気がして、人ごみが怖くなくなりました。
また、沢山の新しい出会いの中で、同じような悩みを持つ飼い主さんに会うことも多々あり、貴重な体験談や、役に立つ情報を貰える事も。何より「私達だけじゃないんだ!」という勇気を貰う事も出来、トレーニングで行き詰った心をリセットしていました。
最初のメールセッションから1年。ほんの少しずつですが、でも確実にラヴィの世界は広がってきています。
極寒の中過ごしたセンターでの1ヶ月。死の恐怖と隣り合わせの環境からラヴィを救い出してくれたのは里親探しのボランティアの方達でした。
引出しが決まり収容部屋から出されたラヴィは、迎えに来たボランティアの方の胸に飛び込み、頭をギューッと押し付けて決して離れようとしなかったそうです。心にどんな闇を持って生きてきたのかは分かりませんが、人間を信じる事だけは決して諦めなかったラヴィ。今やっとラヴィの未来に明るい光が差し込んできたような感じがします。 MASUMIさんに会えて本当に良かったです。MASUMIさんのおかげでラヴィの気持ちも分かったし、今まで以上にラヴィとの時間を楽しむ事ができるようになりました。きっとラヴィ自身もそう言ってるんじゃないかな…?
これからも勉強を続けて、同じ悩みを持つ人のお手本になれるように頑張ります。本当に、本当に有難うございました。
最後に…。 変化の度合いは犬によってそれぞれ。周辺の環境によってもそれは変わってくると思います。だから「ウチの犬はダメなんじゃないか…。」とか「何をやっても変わらない…」などと諦めないで欲しいです。
犬がその一生をどのように過ごすのかは飼い主によって決まるのですから、諦めず、犬と歩調をあわせて、いつか必ず繋がるんだと信じて頑張って欲しいと思います。
Comments